焼いてから煮るのはなぜ?組み合わせと順番の科学
まず、答え
料理は、ひとつの調理法だけでできているわけではありません。焼いてから煮る、蒸してから焼く、揚げてから煮る。順番を組み合わせるのは、1回の加熱では両立できないことを、両方手に入れるためです。
どうして?
こんがりした香りは、表面が140度以上にならないとできません。かたい肉がとろけるのは、水の中で75度以上を長く保ったときです。
この2つは、同じ温度では作れません。だから、先に高温で表面を焼いて香りを作り、そのあと水の中でゆっくり煮てやわらかくする。順番に分ければ、どちらも手に入ります。
カレーやシチューやビーフシチューが、必ず「まず肉を焼く」から始まるのは、このためです。
もう一歩
代表的な組み合わせを見てみます。
焼いてから煮る(カレー、煮込みハンバーグ)。表面の香りをつけてから、中をやわらかくします。
蒸してから焼く(焼き豚、焼き野菜、中華まんの焼き)。先に中まで火を通しておき、最後に表面だけ高温で仕上げます。厚みのある食材で失敗しにくい方法です。
揚げてから煮る、またはからめる(酢豚、揚げ出しどうふ、南蛮づけ)。衣が煮汁を吸って、味と食感の両方が生まれます。
ゆでてから炒める(焼きそば、野菜炒め)。火の通りにくいものを先にやわらかくしておけば、炒める時間を短くできます。
そして、味つけの順番にも同じ考え方が使えます。入りにくいものを先に、香りをのこしたいものを後に。塩は水を引き出すので、しっとりさせたいか、ひきしめたいかで、ふるタイミングを変えます。
料理の設計とは、こう言いかえられます。何を先にして、何を後にすれば、ほしいものが全部そろうか。
へぇ、となる話
世界の煮込み料理は、地域も材料もばらばらなのに、ほとんどが「まず焼いて、それから煮る」という同じ手順を持っています。示し合わせたわけではありません。おいしくしようと工夫を重ねた人たちが、それぞれの土地で、同じ物理の答えにたどりついたのです。
身のまわりの同じしくみ
カレー、肉じゃが、酢豚、シチュー、チャーシュー。台所の手順書は、じつは温度と時間の設計図です。