冷やす・寝かせると、なぜおいしくなるの?
まず、答え
冷やす時間や寝かせる時間も、りっぱな調理です。冷めるときに味がしみこみ、休ませている間に、食べものの中で成分の変化が進むからです。何もしていない時間に、ちゃんと仕事が進んでいます。
どうして?
煮ものを火にかけているとき、食材はふくらんでいて、煮汁が入るすきまがあまりありません。火を止めて冷めていくと、食材が縮み、まわりの煮汁を吸いこみます。だから、味は冷めるときに入ります。
焼いた肉をすぐ切らずに数分休ませるのも同じで、熱で縮んでいた筋がゆるみ、片寄っていた肉汁が全体にもどります。切ったときに肉汁が流れ出さないのは、このためです。
もう一歩
寝かせている間には、いくつものことが同時に起きています。
肉や魚を低い温度で置いておくと、もともと入っている酵素がたんぱく質を少しずつ分解し、うまみのもとであるアミノ酸が増えます。これが熟成です。
ハンバーグのたねを冷やしてから焼くのは、脂がとけ出しにくくなり、形もくずれにくくなるからです。
一方、冷やすと悪くなるものもあります。ごはんやパンは、冷蔵庫の温度あたりででんぷんの形がもどってかたくなります(老化)。パンを冷蔵庫に入れるとぱさつくのは、このためです。冷凍ならこの変化はほとんど止まるので、保存するなら冷凍のほうが向いています。
とろみも温度で変わります。ゼラチンは冷やすと固まり、あたためるととけます。かたくり粉のあんは、冷えると水が分かれてくることがあります。
へぇ、となる話
一晩おいたカレーがおいしいのは本当ですが、同時に、菌がふえやすい料理でもあります。とくにウェルシュ菌は、熱に強い形になって100度の加熱でも生きのこり、40度前後でどんどんふえます。作りおきは、なべごと室温に置かず、早く冷まして冷蔵庫へ。食べるときはよくかき混ぜて、しっかり加熱してください。おいしさと安全は、どちらも温度の管理でできています。
身のまわりの同じしくみ
一晩おいたカレー、寝かせたハンバーグ、休ませたステーキ、熟成肉、冷やご飯。時間そのものが調味料になっています。